ヘッドホンから音楽を聞いていただき、同時にその音の振動を伝える小型クッションをゆっくり動かしながら、肩、腰、足先など体の各所に振動を伝え、緊張をゆるめていきます。
　耳からは音楽の安心を感じ、体にはその音楽が振動となって心地よく響き、体の水分に動きを与え、血液やリンパの流れがよくなります。副交感神経と交感神経の働きを高め、体の調節力が高まります。

　音は物体の振動によって生まれます。例えば、太鼓をたたくと太鼓の皮が振動し、それが空気を押し出し、次々と伝わって耳に届きます。音は振動として物質を振動させながら通過していきます。その速さは、空気中と比べて、水の中では約4.4倍、骨の中では約16.5倍にスピードアップします。約70％が水分で、多くの骨で構成された私たちの体は、音をよく伝える性質があります。そして、音を浴びると、皮膚から入った音の波によって体の水分や細胞一つ一つが微細に振動し、その影響を私たちは受けていると言えるでしょう。

水に広がる150Hz以下の低音の振動
（体感音響システムHV051mによる実験）

　宮沢賢治さんの童話「セロ弾きのゴーシュ」に、【ゴーシュの弾くチェロの音色がよい振動となり、床下の動物たちの体にごうごう響いて、体の具合がよくなる】という一節があります。低い音は体に振動として感じやすく、体の緊張をゆるめる作用があります。チェロの心地よい低音の振動がマッサージがわりとなって、動物たちはとても気持ちよかったと思います。「音が動物たちの病気を治した」と言うよりも、動物たちに備わった回復力が、心が穏やかになったり血流がよくなったことで働きやすくなり、結果的に病気がよくなったというわけですね。

　私たちの体は、すべての器官が支え合って調和し、健康を維持しています。それは心の状態とも密接につながっています。心の状態を左右する環境の一つが音です。人工的なノイズの中では、体は緊張し、血液の流れも悪くなってしまいますが、心地よい音を聞くと、体と心に心地よさが湧きたち、血流がよくなり体の機能が高まります。体には治る力が備わっており、心地よい音はその働きを応援してくれます。体と心に心地よい音を浴びて、心身を健やかに整えましょう。本来の自分を取り戻し、喜び多い人生の創造にきっと役立つはずです。